「崩壊する親子関係」 前橋信和(現 関西学院大学名誉教授) 『月刊少年育成』2010年7月号 ①(前)/「人生のくくり方」 加藤秀俊 NHKブックス 1981年 ⑩【再掲載 2017.10】

今日は5月1日、木曜日です。



今回は、『月刊少年育成』誌より、前橋信和さんの
「崩壊する親子関係」1回目(前)を載せます。


読むのが辛い新聞記事が例に挙げられています。




もう一つ、再掲載になりますが、加藤秀俊さんの
「人生のくくり方」⑩を載せます。
社会学の幅は広いと感じます。







☆「崩壊する親子関係」 前橋信和(現 関西学院大学名誉教授) ①(前)

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◇子どもに対する虐待事件が次々と‥


 同居23歳男「発熱、泣きやまず腹を押した」。


 1歳6か月の男児が意識不明の重体になり、搬送先の病院で死亡が確
認された。


 容疑者は

「子どもをあやしたのに泣きやまず、腹が立った」

と容疑を認めている。


 消化管に穴が開く「消化管穿孔(せんこう)」と臓器などが傷つけら
れて腹部に血がたまる「腹腔腱内出血」の傷害を負わせた。
                 (2010年4月15 産経新聞)




 「最近、言うことを開いてくれない」

 「何で泣くのかわからない」。

 19歳の男性が、同居女性の留守中に女性の長男(2歳)に繰り返し暴
行した疑いで逮補され、男児は同日死亡確認された。

 「元は他人の子、実父に似ており、2人きりになるとたたいてしまう」

とも供述している。
                  (2010年4月16日 毎日新聞)




 「愛情わかなかった」。

 5歳の長男に約2か月にわたって十分な食事をさせず餓死させたと
して、両親(夫35歳、妻26歳)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕
した。


 2人は警察の調べに対し、「愛情がわかなかった」と話し、容疑を
認めているという。


 子どもはこの一週間まったく食事をとっておらず、寝たきりで、紙お
むつをしていた。


 筋肉はほとんどなく、「骨と皮」の状態だったという。
             (2010年3月3日 読売新開)




 「母親が15歳娘に売春強要 柏手は71歳の元継父」。


 15歳の実の娘に売春させたとして、パート従業員の女(55歳)を逮
捕した。


 売春の相手は、女が娘と実父との離婚後に再婚、離婚した元夫(71
歳)。


 女は「お金が欲しかった」と話し容疑を認めている。
                 (2009月4月22日 産経新聞)




 子どもに対する虐待事件が次々と発生し、子どもに重大な被害が及ん
でいます。


 上の記事を読むと、何か親子関係、大人と子どものごく当たり前と考
えられてきた関係が壊れてしまっているように感じられます。






◇生得的な学習行動について


 一部の鳥類では、生後間もなく見つけた動くものを親として認識し、
ついてまわるという行動が確認されています。


 生後のある時期に、特定の物事がごく短時間に学習され、長時間持続
することから、これちの現象をインプリンティング(刷り込み)と呼び、
コンテツト・ローレンツの著作でよく知られ、生得的な学習行動につい
ての研究を大きく進歩させるきっかけとなりました。


 おそらく、親が雛を抱卵し、誕生した雛が親を追いかけることによっ
て、餌を得、泳ぎや飛ぶことを覚え、危険を回避し、雛が生きるための
すべてを獲得するために必要な生物的な装置として備わったものなので
しょう。


 親から離されて飼育されるアカゲザルで、哺乳瓶の装着された針金む
き出しの針金製の代理母(ハードマザー)と、やはり哺乳瓶の装着され
た、柔らかい布で穫われた針金製の代理母(ソフトマザー)に対する、
赤ちゃんざるの接触時間の比較実験がアメリカのハーローという心理学
者によって行われました。


 ハードマザーから授乳される赤ちゃんざると、ソフトマザーから授乳
される赤ちゃんざるとでは、授乳量や体重増加等に差はなかったものの、
明らかにソフトマザーに接触する時問が長かったこと、ハードマザーか
ら授乳した赤ちゃんざるも接触時間はソフトマザーの方が長かったとい
うことです。


 新奇な刺激に対しては、ソフトマザーに抱きついた後刺激への対応が
はじめられたということです。


 アカゲザルの赤ちゃんでは、お乳をのむという生理的欲求の充足だけ
ではなく、情緒的な安定もとても重要で、安心が確保されることによっ
て不安や恐怖に対処できるようになることが理解できます。


 人間においでも、生後の一定期間に、特定の大人との選択的な行動が
学習されることが知られています。


 愛着行動といい、微笑や発声などの発信行助、注視や接近などの定位
行動、しがみついたり抱きついたりする能動的身体接触行動があるとさ
れており、やはり生存に必要なものを保護者から獲得するのに必要なた
めに生得的に備わった学習機能ではないかと考えられます。


 生後すぐの赤ちゃんは、まったくの無能力状態で生まれ、保護者から、
お乳を与えられ、排泄物を取り除かれ、清潔が保たれ、温度や湿度、騒
音などの環境にも配慮がなされなければ健康に育っていきません。


 また、抱きかかえられ、あやされ、話しかけられなければ言語の獲得
やコミュニケーション能力が育ちません。不快状態や空腹、眠たい状態
などは泣く事で示され、快状態や満腹などは微笑みやすやすやとした眠
りなどで示されます。


 保護者は微笑みやすやすやとした眠りの状態、あるいはハイハイや発
語などの発達を恵みの贈り物として受け取っていきます。




◇大人優位、保護者優位の力関係のもとに(1)


 大人の側には、子どもに対しては、全面的に保護を提供し、子どもを
注意深く観察して状況を把握し、適切に対応することが求められます。


 また、その子どもの年齢に応じた、しつけや教育も与えることが要求
されます。


 そのような意味では、大人と子どもは対等であるとは言えません。


 圧倒的に大人優位、保護者優位の力関係のもとにあるといえます。


 それだけに大人には要求される責任も大変重くなります。


 最初の記事の例では、発熱状態の赤ちゃんの機嫌が惑いのは当たり前
のことであり、泣きやまないからといって自分の腹立ちのまま赤ちゃん
の腹を押さえればどうなるかということに対する想像力、推理力が働か
ず、行動の抑制ができずに大人としての行動が全くできていません。


 その結果死亡という重大な事件を引き起こしてしまいました。



 2例目の記事では、「最近、言うことを聞いてくれない」「何で泣くの
かわからない」ということで2歳の男児に繰り返し暴行を行っていまし
た。


 2歳の子どもが言うことを聞いてくれる年齢かどうかが分かっておら
ず、子どもが泣いているとき、子ども自身もその由などはよくわかって
いないだろうということが理解できていないようです。


 さらに、自分の子どもではなく、実父に似ているということでも攻撃
性をぶつけた可能性があります。



 2例とも若い母子のところに同居している男性からの暴力です。


 若い男性からの、繁殖行動の相手女性が他の男性との間にもうけた子
どもに対する危険性ということにももっと気をつけるべき要素ではない
かと感じます。










☆「人生のくくり方」 加藤秀俊 NHKブックス 1981年 ⑩【再掲載 2017.10】

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◇老後の儀礼

 年祝い 
  昔の日本 
    12年刻みで年祝い
 沖縄・奄美諸島
     -  数え13 25 37 49 61 85
  = 満では十二支


 厄年 = 役年  
  島根ではお祝い 


 年賀  
  宮中・公家
   - 40 50 60 70 80 90 100
40歳の年賀が大事


 十進法と十二進法では60
東洋思想 十二支十干




◇吉野裕子『陰陽五行と日本の民俗』

 中国 → 日本
陽明学
    宇宙の根源は大極 
      陰 月 -旧暦
陽 太陽-新暦
「宇宙のすべては陰と陽に分かれる」


 陰陽の中に 
  木・火・土・水・金の五要素
  = 五行・五気
  兄弟 
   陰陽に分かれる
  木の兄(甲)
木の弟(乙)


 十干 
  10種類の宇宙構成要素
甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)
戊(つちのえ)己(つちのと)庚(かのえ)辛(かのと)
壬(みずのえ)癸(みずのと)


 太極 
  陰 五行兄 
 陽 五行弟
 
 「甲」ヨロイ 草木種子 原皮かぶっている
 「乙」車しる 草木幼芽 屈曲状態
「丙」 草木伸長 形体著明
「丁」 草木充実 形体充実
「戊」茂る  草木繁茂 
「己」紀   草木盛大 条理整う
「庚」更まる 草木成熟・団結 新しいものに改まってゆこうとする
「辛」新   草木枯死
「壬」妊   草木種子内部 新しいもの
「癸」揆る  草木内部種子 皮になった


 十二支十干の組み合わせ 
  = 60年1サイクル
   還暦 = 1サイクル
  赤いちゃんちゃんこ
       = 60歳で生まれ変わって赤ちゃんとしての第一年目
      = 本卦がえり


 女性は七の倍数で身体が発育衰弱


 男性は八の倍数で身体が発育衰弱